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最高裁判所第三小法廷 平成7年(行ツ)93号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人中尾昭、同山城昌巳の上告理由第一点の一について

平成八年宮崎県条例第二七号による改正前の宮崎県における青少年の健全な育成に関する条例(昭和五二年宮崎県条例第二七号。以下「本件条例」という。)一三条一項による青少年に有害な図書類の指定が憲法二一条二項前段の検閲に当たらないことは、当裁判所の各大法廷判決(昭和五七年(行ツ)第一五六号同五九年一二月一二日判決・民集三八巻一二号一三〇八頁、昭和五六年(オ)第六〇九号同六一年六月一一日判決・民集四〇巻四号八七二頁)の趣旨に徴して明らかである。これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。論旨は、採用することができない。

同第一点の二、第二点、第四点及び第五点の二4、5について

本件条例一三条一項、三項、四項の規定による青少年に有害な図書類の販売等の規制は、青少年の健全な育成を図るため青少年を取り巻く環境を整備するという正当な立法目的を達成するために必要かつ合理的な規制であるということができ、これが憲法二一条一項に違反するものでないことは、当裁判所の各大法廷判決(昭和二八年(あ)第一七一三号同三二年三月一三日判決・刑集一一巻三号九九七頁、昭和三九年(あ)第三〇五号同四四年一〇月一五日判決・刑集二三巻一〇号一二三九頁、昭和五七年(あ)第六二一号同六〇年一〇月二三日判決・刑集三九巻六号四一三頁)の趣旨に徴して明らかである(最高裁昭和六二年(あ)第一四六二号平成元年九月一九日第三小法廷判決・刑集四三巻八号七八五頁参照)。原審の判断は、これと同旨をいうものとして、是認することができる。論旨は、採用することができない。

同第三点について

本件条例一三条一項一号所定の青少年に有害な図書類の概念は、同号に定義されたところに照らせば、不明確であるということはできない。これと同旨の原審の判断は、結論において是認することができる。この点に関する所論違憲の主張は、前提を欠き、採用することができない。

同第八点について

所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができる。右事実関係によれば、上告人の製造、販売したコンピューターゲームソフトを入力した本件フロッピーディスクは、簡単なクイズに答えて女子高校生の衣服を脱がせるというアニメーション画面を使用したものであって、画像がかなり写実的であり、画面上のポインタで当該女子高校生の身体に触れると、遊戯者に反応するかのように画面上にせりふと表情が現れるようになっているというのであるから、本件条例一三条一項一号にいう「著しく青少年の性的感情を刺激し、その健全な成長を阻害するおそれのあるもの」に当たるということができる。これと同旨の原審の判断は、結論において是認することができる。論旨は、独自の見解に立って原判決を論難するか、若しくは原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は原判決の結論に影響のない部分についての違法をいうに帰し、採用することができない。

その余の上告理由について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、違憲をいう点を含め、独自の見解に立って原審の右判断における法令の解釈適用の誤りをいうか、又は原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものに帰し、採用することができない。

よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 金谷利廣 裁判官 千種秀夫 裁判官 元原利文 裁判官 奥田昌道)

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